【深い虫歯】
虫歯が歯髄まで到達 動画
深い虫歯とは
C3 深い虫歯とは
歯髄(しずい)に達した虫歯のことを深い虫歯と言って説明していきます。歯髄とは、歯の神経のことです。浅い虫歯は比較的、簡単な治療で終わるのですが、深い虫歯の治療は根治(こんち)をしなくてはいけないので治療の回数もかかれば、痛みなども出ることもあり、できれば避けたい治療です。浅い虫歯とはこちら
大きな虫歯と深い虫歯
大きな虫歯だからといって深い虫歯とは限らない。
見た目が大きな虫歯でも歯髄まで到達していない浅い虫歯もあります。見た目が小さく見えても、歯髄まで到達しているような深い虫歯もあります。一見、小さな虫歯でも
外から見るとほんの小さな穴に見えても、虫歯が歯の中で広がっている場合があります。歯髄まで到達をして細菌が広がると歯髄炎という激烈な痛みが発生する場合があります。歯髄炎
歯髄炎とは、細菌が歯髄に到達することにより、強烈な痛みを伴う歯髄の急性炎症のことです。歯の痛みの中で、最も強い痛みと言われています。
歯髄炎が起きてしまったら歯髄を除去します。
歯髄炎が起きてしまったら歯髄を除去します。
抜髄(ばつずい)
抜髄
歯医者で「神経を取りますよ。」という説明がありますが、もっと正確にいうと「歯髄をとりますよ。」ということになります。歯から歯髄(神経)をとることにより痛みを抑える治療法のことです。
歯髄とは
歯髄とは神経と血管の複合体です。写真のようにツルっと出てくる場合もあれば、バラバラになってちぎれて除去される場合もあります。実際の歯髄の写真です。
根治(こんち)の動画
根治の流れ
根治とは
歯髄を除去した後に歯にあいた穴を根管(こんかん)と言います。歯髄が入っていたスペースのことです。根管の壁には細菌がくっついているので、これを取り除かなくてはなりません。これを根管治療、略して根治といいます。ファイルとは
根治で主に使用するのがファイルというヤスリ付きの針のような治療器具です。太さや長さが色々あります。このファイルで根管の壁を削りながら細菌を除去していきます。徐々に感染した状態から、無菌状態に仕上げていきます。当院では抜髄から根治になった場合はなるべく1回、多くて3回で根充までいくようにしています。
煙突の壁のお掃除
根治をよく「煙突の内壁のお掃除」に例えます。煙突が歯、煙突は内壁にススがつきますが、ススが細菌です。根管の中は先の方まで細菌がくっついていますのでファイルを使って壁ごと細菌をかき上げて綺麗にしていきます。
根管の中は実は複雑な走行をしている。
根治中の歯は歯医者から見て、こんな感じで見えています。実際はラバーダムというシートをしています。根管は入り口しか見えません。マイクロスコープで見ても光が届く範囲しか見えないので根管の先までは見えることはまずありません。
根幹の直径も0.5mm程度しかないですから見にくいです。
そして10〜20mm程度長さが弯曲や分岐をして走行しています。
手指感覚がたより
手指感覚と根管長測定器、マイクロスコープを頼りに慎重に汚れを掻き出していきます。力が強すぎると、ファイルの破損や根管壁の破折につながります、力が弱いと綺麗にお掃除ができません。機械や薬剤を併用し中を綺麗にしていくのですが、結局最も大切なのがファイルを扱う手指感覚です。薬剤、器具の種類が多い
根治は細かな器具がとにかく多いです。唾液の中には細菌がいるので、ラバーダムによって術野を唾液から隔離するのですが、このラバーダム関係だけでも10パーツ程度器具が必要です。薬品も種類が多く、薬品を入れるシリンジや小グラスといった細かな器具も全て滅菌したものであるためコストが非常にかかります。本日の抜髄が終わったら
綿に薬品を染み込ませて、上に蓋をして密閉してお帰りいただきます。次回までに唾液が一切中に入らないように特殊な蓋でしっかり覆います。しかし何ヶ月もいらっしゃらないと蓋の部分から漏洩して中は根治をした意味がなくなってしまいますのであまり治療を伸ばさないでください。1週間、様子をみます。
根管内が無菌状態のまま、1〜2週間様子をみます。その間、痛みが出たらお電話くださいね。根治はとても難しい治療なので、痛みが取れないこともあれば、想定通りうまく治りにくいこともあります。根充(こんじゅう)
根充とは
1週間後、根治の経過が良いようなら根充を行います。根管から出血や排膿はないか?自発痛や打診痛はないか?などを確認します。根充とは根管内に細菌が入らないよう、根管内を緊密に埋めてしまう治療工程のことです。根充に使うのはガッタパーチャーというゴムのような治療材料です。このガッタパーチャーを根管に隙間なく詰め込むわけです。ガッタパーチャーは細いものから太いものまでそろっているメインポイントと、隙間を埋めるアクセサリーポイントがあります。
根管の長さ太さにフィットさせる
根管の長さと太さは、ファイルと根管長測定器で測っておきます。長さは10~20mm程度が多いです。根管にジャストフィットする太さのメインポイントを選択し、長さも根管長と同じ長さに折っておきます。シーラー
シーラーという隙間を埋める材料を同時に使用します。根管は複雑な形態をしているため円形の断面のガッタパーチャーだけでは隙間が生じてしまいます。そこでしっくいのような材質のシーラーを使用し隙間をなくしていくのです。このシーラーをガッタパーチャーにからませて根充をしていきます。根充準備終了
ガッタパーチャーにシーラーをつけておきます。その他、薬剤や器具も準備しておきます。これで準備が完了です。これからアシスタントと息を合わせて根充を行います。根充開始
根管内を最後に消毒乾燥をして、さあ、ようやく根充開始です。まずはメインポイントを根の先までしっかりと差し入れます。ファイルであけた穴とメインポイントはジャストフィットするはずなので、はまる位置まで押し込んでいきます。アクセサリーポイント
メインポイントだけでは根管壁との間に隙間があいてしまうので、アクセサリーポイントにもシーラーをつけて隙間を埋めていきます。器具を使って圧力をかけ隙間をつめて数本のアクセサリーポイントを入れていきます。とにかく隙間を潰す
さらに圧力をかけて隙間を潰しながら、アクセサリーポイントを追加していきます。これ以上詰めきれないところでガッタパーチャーは終わりです。上の余分なガッタパーチャーは加熱した器具で焼き切ります。根充終了です。
ガッタパーチャーという材料を隙間なく詰めることにより、細菌を侵入を防ぎます。根の先端まできっちりと詰まっていることが大切です。さらに機密性を高めるために当院ではガッタパーチャーの上の層に接着性のレジンセメントを詰めて将来的な漏洩を防ぐ努力をいたします。
根充後のレントゲン写真
左が根充前です。右が根充後です。根充した後、根の先端までガッタパーチャーが詰まっているかをレントゲンで確認します。ガッタパーチャーにはレントゲンで白く映る造影剤が入っています。(人体には無害です。)そのため、レントゲンを撮影した時に、根充を終えた歯はガッタパーチャーの白いラインが入るので、歯髄が残っている歯かどうかすぐにわかります。歯冠形態修復
根充後、歯を入れる治療
根充が終わったら、その後は噛むために歯の形を戻す治療を行います。虫歯により崩壊した歯の頭の部分の形により治療法は様々あります。コアを入れてクラウンで蓋をしたり、レジンで穴を封鎖したりします。深い虫歯になる前に
歯髄を取る前に歯医者に来てください。
虫歯は早く治療しましょう。そんなことはわかっている!と思うかもしれませんが、もう一度、虫歯は早く治療すべきです。この注意は歯髄を取るか、取らないかでその後の歯の寿命はずいぶん違ってきてしまうからこそ申し上げたいのです。根治をした歯の寿命は短い
根治をしてしまった歯は、その後でどんなに歯ブラシをしようとも将来的に歯根破折や歯根膿瘍が発症しやすく寿命が短くなります。歯髄がある歯の方がよほど長持ちをするので、治療でもまずは根治を避けるようにするべきだと思っています。しかし歯医者は任せられた時点から、最善をつくすしかないので、歯髄炎になってこられても根治を避けることができず、せめて丁寧な根治をすることしかできないわけです。あと1ヶ月早く来てくだされば、根治せずに済んだのにと思いながら、日々診療をしております。
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