【2)歯牙固定】
動画
この動画だけで、歯牙固定についてご理解できます。
歯牙固定とはこんな方法です。
歯牙固定とはどのような治療法か?
歯の1、2本がグラグラと動揺してきた場合、接着剤(スーパーボンドなど)で隣の動揺がない歯とくっつけて動揺を止める方法です。どんな歯に適応なの?
主に前歯(1・2・3番)が主に適応です。小臼歯(4・5番)も可能なこともあります。大臼歯(6・7番)は力がかかるので適応外となります。どんな疾患の時に用いられるの?
@前歯をぶつけてグラグラしてしまった場合、隣の歯に接着しておくと動揺がおさまります。A歯周病で歯槽骨が吸収してしまい、歯が動揺をおこしてきた場合。
B1本だけ噛み合わせが強くて動揺を起こしてしまった場合。(咬合性外傷といいます。)
こんな場合は歯牙固定しない方がよい
@歯根破折を起こしているために動揺がある場合。(無理に固定してしまうと中の骨が溶けてしまうので、隣の歯までダメになってしまう可能性がある場合。)A歯根膿瘍が大きく動揺している場合。
B隣の歯も動揺歯の場合。
銀歯やセラミックスは接着剤が効かない
@隣の歯が銀歯かセラミックスの場合。A動揺のある歯が銀歯かセラミックスの場合。
治療法(通常の歯牙固定)
スーパーボンド
スーパーボンドといえば、歯科業界では知らない人はいないほど有名な接着剤です。動揺歯牙を固定したり、矯正装置を歯に接着したりと当院でも毎日のように使用しています。透明でかつ強力な接着力のため,咬合圧さえ加わらなければ、長期間持ちます。
歯を削る必要もなく、異物感もなく、見た目も綺麗です。
ただし、歯質に接着することを目的に作られているので、金属やセラミックスへの接着力は乏しいです。
<歯牙固定の手順>
@歯のクリーニングをします。
歯面が汚れている場合は、接着剤が効かないため、綺麗に清掃します。歯の接着システムは歯面が汚れていると力を発揮できません。ビニールテープ状のヤスリを使って、歯と歯の間の汚れも落とします。A酸処理をします。
エナメル質の酸処理をして、接着剤がつきやすいようにします。酸を塗ったら、水洗い、乾燥することにより歯質の中にスーバーボンドが食い込むことができるようになります。B歯牙固定用の接着剤(スーパーボンド)を塗ります。
スーパーボンドは無色透明です。薬液と粉を混ぜて接着剤を作り、歯間に流し込んでいきます。多少歯面にも塗ります。歯の表、裏と両方塗ります。この作業中は、動いたり、舐めたりしないでください。少しでも唾液が入ると接着力はなくなります。乾燥下で行えるかが大切なポイントです。塗り終わりましたら、10分程度待ちます。C研磨します。
接着剤をつけた部分は舌で触るとザラザラするので、ツルツルになるまで、研磨します。グローブ越しですが、指で感触を確かめながら行います。D歯の長さを揃えます。
固定が終わったら、歯の長さが違うことがあります。この場合長さを揃えたり、噛み合わせの高さを合わせたりして形態を整えます。Eこれで完成です。
動揺歯がぶつけたとか、噛み合わせの力によってなどの理由の場合はこれで様子を見れば、数ヶ月後にはスーパーボンドをとっても動揺がなくなっているはずです。ただし、ぶつけた衝撃で歯髄(神経)が死んでしまっていると黒くなってしまう可能性があります。さらに強力な歯牙固定
ファイバーリボン+スーパーボンド
スーパーボンドだけでは止まりにくい場合、ファイバー線維のリボンを補強材にしてスーパーボンドで貼り付けるという治療法もあります。揺れの度合いが強い、複数歯が揺れる場合など、この治療を行うことが多いです。多少、舌感は悪くなりますが、数本をスーパーボンド単独よりさらに強力な力で止めることができます。しかしこれもやはり天然の歯牙同士でないと本来の接着力が出ず、銀歯やセラミックスでは適応外となります。
@歯のクリーニングと酸処理をします。
歯面が汚れている場合は、接着剤が効かないため、綺麗に清掃します。また、ビニールテープ状のヤスリを使って、歯と歯の間の汚れも落とします。酸処理をしてスーパボンドが歯質にからみやすくします。
A歯面にスーパーボンドを塗ります。
スーパーボンドを乾燥している歯質に塗布していきます。
Bファイバーリボン歯面から浮かないように置いていきます。
適度の長さにカットしたファイバーリボンを歯面から浮かないように貼り付けていきます。スーパーボンドを馴染ませながら気泡が入らないように綺麗に手早く貼り付けます。ファイバーリボンが浮くと後で研磨しても鋭利なところが出て舌が痛いので、アシスタントと息を合わせて綺麗に貼り付けていきます。
通常は見えない歯の裏側にファイバーリボンを貼り付けますが、特に動揺が強い場合には歯の表にも貼り付ける場合もあります。
貼り付け終わったら10分待ちます。唾液などの水分があると接着しにくくなるので、口の中が乾きますが我慢です。
通常は見えない歯の裏側にファイバーリボンを貼り付けますが、特に動揺が強い場合には歯の表にも貼り付ける場合もあります。
貼り付け終わったら10分待ちます。唾液などの水分があると接着しにくくなるので、口の中が乾きますが我慢です。
C研磨作業をします。
ファイバーリボンは繊維があるので、1本でも毛羽立つところがあると舌が傷つきます。単体のスーパーボンドより、研磨は大変です。舌感が悪くならないようにツルツルしているか慎重に確認していきます。しかし、ファイバーリボン分の厚みは出ますのではじめは気になるかもしれません。
D歯の長さや噛み合わせを整えます。
動揺歯は少し出てきてしまっている場合が多いので、上を削って長さを整えます。また、噛み合わせも整える場合もあります。
Eこれで完成です。
少々舌感が悪いかもしれませんが、歯が抜けてしまうことを考えれば仕方がありません。様子を見ましょう。ぶつけたなどの外傷であれば数ヶ月後はずすことができます。歯周病の場合は、はずすことはできません。