【ドライソケットについて】
ドライソケットの動画
ドライソケットとは
抜歯窩の骨の炎症のこと
ドライソケットとは抜歯後痛みがあり、抜歯後の血餅が欠如し、骨が露出している状態のことと定義されています。(出典元はこちら ※下顎埋伏智歯抜歯の臨床的研究 ―第2報:ドライソケットについて―)抜歯窩(ばっしか):抜歯をした後の穴のこと。
血餅(けっぺい):歯を抜いた後にできるゼリー状の血の塊。
抜歯後感染症の症状の1つ
抜歯窩は唾液の中にあるので、唾液の中にいる細菌が多少なりとも入ってしまいます。入ってきた細菌に打ち勝ち順調に治るサイクルに入ってしまえば、抜歯後感染の影響(痛みなど)は起こらないですが、侵入した細菌が優勢に働くと、順調に治るサイクルに入れなくなり、抜歯窩は感染、炎症を起こし痛みが出ます。ひどくなると骨が露出してドライソケットと呼ばれる状態にまで発展します。もっと重症化すると蜂窩織炎が口腔底や頸部にまで発展する場合もあります。厳密な意味でのドライソケットの状態かどうかの判断は難しい
抜歯後、数週間にわたり激烈な痛みが続く場合には、抜歯後感染が原因です。実際に骨が露出して見えている抜歯窩もありますが、臨床の現場において骨が露出しているかどうかの判断は難しい場合が多いと個人的には考えています。激烈な痛みのある患者様の患部は触ることすら難しく、例えば抜歯窩に入ってしまっている食べかすをとって骨が露出しているかどうか調べることは患者様にとってメリットも少ないわけです。ドライソケットという診断
当院では抜歯後、骨が露出している状態が確認できた場合には「骨の露出を伴う抜歯後感染ですのでドライソケットですね。」と説明しますが、骨が露出していない場合や不明な場合には「抜歯後感染です。」と説明しています。(参照:これからの抜歯〜その背景と実際 学建書院 編集 森昌彦 P118,147,148,149)
なぜみんなドライソケットを怖がるの?
A.特に強い痛みが長期間続くからです。
ドライソケットの痛みは、親知らずを抜歯当日の痛みより強い場合があります。痛み止めが効きにくいことはよくあります。それが1ヶ月以上続く場合があります。ドライソケットの経験者も比較的多いので、ドライソケットが恐れられるようになったのでしょう。ドライソケットの発症確率
下の横向きの親知らず抜歯の場合4〜6人に1人
ドライソケットの発症確率は下顎の横向きの親知らず抜歯の場合、15〜25%という論文があります。すると4〜6人に1人はドライソケットになるという計算になります。ちなみにドライソケットになるのは下の親知らずだけではありません。他の永久歯の場合でも起こりますが、2〜4%という論文があり発症確率に大きな差があります。(出典元はこちら ※下顎埋伏智歯抜歯の臨床的研究 ―第2報:ドライソケットについて―)ドライソケットの痛みが発症するまでの日数
平均5日。痛みのピークは1週間
親知らずを抜いた後は当日から痛みが出て、翌日から減っていく傾向がありますが、ドライソケットが出現すると3日目から次第に痛みは大きくなり7日目がピークとなります。ドライソケットによる痛みが発生する平均日数は4.7日です。(出典元はこちら ※下顎埋伏智歯抜歯の臨床的研究 ―第2報:ドライソケットについて―)いつまで続くのか?
痛みは2〜3週間である場合が多いのですが、1ヶ月以上続く場合もあります。ドライソケットの痛みはどれくらい?
人により感想は違いますが
痛みに対して強い人もいれば、弱い人もいるので一概には言えませんが、人によっては人生で一番痛かったとか、痛み止めが効かなかったと表現する人もいるくらい激烈な痛みを伴うこともあります。一ヶ月続く場合には食欲不振により体重が減少する場合もあります。ドライソケットは臭い?
A.そんな悠長なことを言っている場合ではないです。
ドライソケットは臭いですか?こんなご質問を受けたことがあります。ドライソケットは炎症ですから、理屈的には無臭ということはないでしょう。歯も磨けないでしょうし。しかし、ドライソケットを発症している方は、痛みの問題の方が大きいので臭いがどうかなど瑣末な問題だと思われます。ドライソケットの原因
@抜歯後の血餅形成不全
血餅(けっぺい)とはゼリー状の血の塊のことです。お口の中は唾液という水分があるので乾燥しているカサブタはできません。代わりに血餅ができてフタをしてくれればよいのでが、うまくできないこともあり、その間にお口の中に常駐している細菌に感染されるとドライソケットが発症します。A血餅の早期脱落
血餅がなんらかの原因でとれてしまうとドライソケットの発症確率は上がります。なんらかの原因とは例えば、強いうがいとか、食べかすが詰まって一緒にとれてしまうとか、歯ブラシでとってしまうなどが考えられます。ドライソケットは縫合していてもおこる
唾液が入るからです。
親知らずを抜いた後、縫合すれば入口は小さくできますが閉じることはできません。また、肉眼的に閉じることができても唾液という水分は中に入りますので当然細菌も中に入ります。縫合が意味ないことはなく、ドライソケットの発症確率を下げていると考えられます。しかし、縫合したからドライソケットにならないということはありません。
ドライソケットの予防法
こうすれば必ず防ぐことができる方法はありません。
残念ながら、ドライソケットの予防法は、確立されていません。抜歯の後、コラーゲンの塊を入れたり、抗生物質の軟膏を入れたりとさまざまな予防策をしていますが確実に止める方法は知られていません。ドライソケットの原因を考えれば発症確率を下げることはできます。
(抜歯当日)@抜歯後のガーゼをしっかり噛む。
A抜歯後にお酒、お風呂、運動など心拍数の上がる行為はしない。
(抜歯後数日)
B抗生物質を飲む。
C強いうがいはしない。
D患部に歯ブラシをかけない。
E患部の近くで食べ物を噛まない。
F傷口を押したり、触ったりしない。
とにかく血餅を取らないように注意してくださいね。
ドライソケットの治療法
@食べかすを除き、消毒、抗生物質の追加投与
生理食塩水で抜歯窩を洗浄して、食べかすを除き、消毒して、抗生物質を追加投与して様子をみます。A掻爬(そうは)
痛みが特に強い場合は、麻酔をかけ抜歯窩の感染内容物を引っ掻き出して、新たな出血を促し、コラーゲンを入れて縫合する。再度抜歯窩が正常な治癒サイクルに入ることを目的に傷口のやり直しをする方法です。親知らず解説メニュー
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