【スクリューリテイン】
人工歯の装着様式には2種類あります。
@セメントリテイン
従来からある装着様式です。スクリューリテインが考案されるまではセメントで上部構造(人工歯)を止める方法しかありませんでした。現在でもよく用いられています。Aスクリューリテイン
セメントリテインの弱点を補うために考案された方法です。セメントを使わずにスクリューの力でインプラントと結合する様式です。当院ではほとんどの症例をスクリューリテインで行います。セメントリテイン
本止めか仮止めか
アバットメント(銀色の突起物)に人工歯を接着剤でつけていく様式です。本止めをする場合は、外れないのが利点でもありますが、何か不具合があった場合には人工歯を壊さないと外れないというのが欠点でもあります。
そのため、仮の接着剤で仮止めする歯科医師もいます。利点は何かあったら外せることで、欠点は人によっては頻繁に外れてしまうことがあることです。または外そうとした時に仮止めがガッチリついてしまっていて狙い通りに外れないこともあります。
セメントリテインのメリット
@人工歯の構造が単純になるためスクリューリテインに比べると安価に製造ができます。Aスクリューの穴が開かないので綺麗な見た目になります。
セメントリテインのデメリット
@接着剤は多少残ってしまうので、将来的にインプラント周囲炎を引き起こしてしまう可能性があります。A当院で行うトライ法ができなくなります。
スクリューリテイン
スクリューの力で固定する方法です。
スクリューリテインが考案されたのは、セメントリテインの接着剤の残りがインプラント周囲炎を引き起こす可能性があるという問題の解決のためでした。スクリューリテインであれば接着剤の残渣はあり得ないことになります。スクリューリテインの手順
@スクリューを締めます。
人工歯に開いた穴をアクセスホールといいますが、ここにスクリューを入れて、ストローマン社専用ドライバーで締めていきます。A仮止め状態
インプラントブリッジをスクリューで止めるとこんな感じです。この状態では指で思い切り締めた仮止めの状態です。コンタクトのキツさや咬合の状態を微調整していきます。B本止め
スクリューをトルクレンチで締めます。人の力の2〜3倍の力で締めますので、なかなか緩まなくなります。Cアクセスホールをレジンで埋める。
アクセスホールを人工歯と同じ色のレジンで埋めます。これで穴が分かりにくくなります。D咬合調整
アクセスホールのレジンは多少高くなりますので、再度咬合調整と研磨作業を行い噛み合わせを合わせます。スクリューリテインのメリット
@セメントの残渣がない
内藤が最も気にしているのがセメントの残渣によるインプラント周囲炎の発症です。スクリューリテインにしたからといってインプラント周囲炎が発生しないわけではありませんが、リスクの軽減にはなると考えています。A外したい時に外すことができる
細菌だらけお口の中に人工歯を長期間取り付けるわけですから、インプラント周囲炎による歯肉の腫れは、あらかじめ想定しておいた方がいいと思います。また、数年後、他の歯を抜いた場合にインプラントを追加せずにブリッジを伸ばすだけで対応ができる場合もあります。B試し歯の装着ができる
当院では、本歯製作の前に試し歯を入れて実生活の中で試していただくのですが、スクリューリテインでなくてはできません。スクリューリテインのデメリット
@製作の難易度が上がるためコストがかかる
セメントリテインであれば単純なクラウン形態の人工歯ですが、スクリューリテインはアクセスホールを開ける必要があるため技術的に難しくなりコストは上がります。Aアクセスホールの見た目が気になる
セメントリテインではアクセスホールはないので綺麗ですが、スクリューリテインの場合はアクセスホールがあるのでレジンで埋めても多少は色の違いが出てしまいます。そこまで気にされる方は少ないのですが、ここはセメントリテインと比べると劣るところです。1本症例から大きな症例まで
全ての方にスクリューリテインのメリットを
1本症例の方も多数歯症例の方も、全ての方にスクリューリテインで装着しています。(ごく稀にセメントリテインしかできない場合もあります。)当院では、平成24年からスクリューリテインに変更しました。
セメントリテインから変更
当院も以前はセメントリテインで装着をしておりました。セメントリテインをやめて、スクリューリテインに全てシフトしたのが平成24年の中頃でした。当時、セメントリテインのセメントの残渣による論文が出始めた頃です。
また、メタルボンドの欠けにも悩んでいましたのでそれを解決するためにジルコニア人工歯にシフトしたタイミングであったため、スクリューリテインにもシフトしました。
試行錯誤
導入当初はアクセスホールの難しさに頭を抱えました。人工歯の中心にネジを入れる穴を開けるわけですから、以前のセメントリテインのクラウン形態とは比較にならないほど難しい技術でしたが、院内技工室を作り試行錯誤すること3年、平成27年頃には安定してアクセスホールが開いた人工歯の製作をすることができました。